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福岡地方裁判所小倉支部 昭和56年(ワ)122号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

第一被告園田益子、同渡辺弘人及び同川端多美子を除くその余の被告に対する請求について

一請求原因3(売買契約の事実)、4ないし6(本件クレジット契約及びその連帯保証の事実)について、まず検討を加える。

1 ナショナル(銀行)ローン購入契約書(甲第一三、一七、二一、二四、二九、三三、三六、四二、四五、四九、五二及び五五号証)について

(一) 本件全証拠によるも、右各契約書の購入者欄及び連帯保証人欄の住所、氏名の記載及び各名下の押印を当該被告がしたことを認めることはできない。<中略>

2 保証人確認書(甲第一四、一八、三〇及び四六号証について)

(一) 右保証人確認証が真正に成立したことを認めるべき証拠はない。

<中略>

3 得意先カード(甲第五八ないし六二号証)及び訴外会社の確認業務について

(一) 訴外クレジット会社の訴外会社担当者であつた石橋良一(以下「石橋」という)が作成したとされるお得意先カードのうち、証拠として提出されているのは右五通(別紙販売一覧表番号1ないし3、6、8、10及び13の分)のみであり、その余については証拠として提出されていない。

(二) 石橋は、次のとおり極めて杜撰な確認業務を行なつていたことを自認(証人石橋の供述、成立に争いがない乙(ハ)第一号証)している。

(1) 購入者及び保証人に対する商品購入や保証の意思などの確認は、原則として自宅まで行つて確認し、電話によることもあると供述し、現に前記お得意先カードの記載には自宅を訪問したとされているにもかかわらず、右カードの保証人確認印欄に押印を受けていることはない(唯一の例外が甲第五九号証に存在するが、その判は、前掲1(二)(4)で指摘したのと同一の「矢上」の判である)。

(2) 商品購入及び納品の有無につき、訴外会社にある保証書や倉庫に購入者名を記入して保管されている商品により確認を行なつたことがある。

(3) 購入者本人とは一度も面談若しくは電話等による確認を行なつていない(被告宮田雅生関係)。

(4) 商品購入の有無を購入者本人から確認しないで、訴外東からしている(被告川端八千代関係)。

(5) 電話により確認したと供述しているもののうち、右得意先カードはもちろん前記ローン契約書にも電話番号の記載がないものがある。

(6) 訴外会社従業員の勘木美智子(以下「勘木」という)と共に購入者や保証人の自宅を訪れ、いつも勘木が家の中に入り、自分は戸外で待つており、同女を信用してこれによつて確認ありとして処理している。

(7) 甲第六一号証の被告安武幸輝の住所は、自分がローン契約書を見て記載したものであり、住所を中間市にしたのは銀行ローン設定のためであると供述しているところその住所は勘木の住所と同じである。<中略>

4 <証拠>を総合すると次の事実が認められ、この認定に反する証拠はない。

(一) 訴外会社は、昭和五五年五月二二日自己破産の申立をし同年七月二三日に破産宣告がなされたものであるが、運転資金に窮し、これを捻出するためにクレジット制度の悪用を企て、現金払いで契約したものを購入者に無断でローンにして資金繰りにあてたほか、真実は電気製品が販売されていないにもかかわらず、知人等の名義を用いて架空の販売をクレジット会社に報告し、右会社から交付される立替金(本件クレジット契約の場合は、仲介手数料)をもつて資金繰りにあて、他方架空契約の発覚を免れるため、契約名義人に代つて利息付のクレジット代金や銀行からの借入返済金の支払を続け、いわゆる自転車操業を行なつていたものである。

このため訴外会社には、常時二〇〜三〇個の認め印、四〇〜五〇冊の預金通帳が置いてあり、訴外東をはじめ、同人の指示を受けた同社従業員が、契約者の名義を冒用し、本件クレジット契約等に必要な契約書や保証人確認書の住所、氏名の記載及び各名下への押印などを行なつていた。

(二) こうした事情もあつて、訴外会社の倒産時に、多数の者から商品を購入していない、あるいは支払が終了している旨の苦情が出された。また、被告らと同様に裁判を起され訴の取下により終了した者の中には、訴外東や勘木の依頼を受けて、架空のローン契約書作成に加担した者がいるほか、ローン契約の締結そのものを否認し、購入代金の完済を主張している者がいる。

(三) 石橋は、毎日のように訴外会社に出向いており、同社から未了分の分割金を受取つたり、訴外会社に代つて銀行へのローン代金の支払手続を行なうなどしていたほか、商品購入者や連帯保証人に対する確認業務についても、訴外会社の従業員(主として勘木)と同行し、同人を通じて確認を行なつていた。また、石橋は、訴外会社に多数の預金通帳や認め印が存在しており、同会社がこれを使用して振込金の支払をしていたことを知つていた。

5 被告盛永俊助は、本件ローン契約の締結を否認し、訴外会社から商品を購入する際はいつも現金払いをしていることを主張しているところ、前掲各証拠、被告盛永祥一の供述及びこれにより真正に成立したものと認められる乙(二)第一ないし第三号証の各一、二によれば、別紙販売一覧表番号14記載の契約(甲第四九号証)により購入したとされているエアコン一台(品番CS三二二AY)につき、ローン契約で購入したものではなく、しかも代金を完済していること、被告盛永俊助は、常に現金払いで商品を購入しており、その代金は支払ずみであることが認められる。

6 以上検討してきたとおり、本件全証拠によるも請求原因3ないし6の事実を認定することはできない。

二次に、請求原因7の事実(架空契約に対する承諾)につき判断する。

1 原告主張の各被告の身分関係については、各当事者間で争いがない(被告矢上有三の身分については、同被告の供述により原告の主張のとおりであると認める)。

2 福銀ローン明細書(甲第一五、一九、二二、二五、三一、三四、三七、四七、五〇、五三及び五六号証)について

(一) 前掲証人山下及び同石橋は、商品購入者である各被告に対し、右福銀ローン明細書が送付されている旨供述しており、また、当裁判所が行なつた送付嘱託に対し、訴外銀行から、福銀ローン明細書が各購入者本人宛に送付されている旨の回答(昭和五八年一二月一二日付及び昭和五九年五月三〇日付)がなされている。

(二) しかしながら、前掲各証拠のほかに被告宮田雅生及び同矢上有三の各供述、弁論の全趣旨によれば、次の事実も認められる。

(1) 別紙販売一覧表番号10の契約については、福銀ローン明細書が証拠として提出されていないところ、前掲甲第四二号証の購入者欄の被告安武の住所は、熊本市内とされており、これに前示一3(二)及び4記載の各事実を照らすならば、福銀ローン明細書は、被告安武方には送付されておらず、仮りにこれが郵送されていたとしても、前記勘木方であつたのではないかとの疑いがある。

(2) 甲第四〇号証に被告渡辺弘人の送付先として記載されている住所(甲第三九号証のナショナルローン購入契約書記載の住所と同一)は、実際の同被告の住所とは異なつており、それは訴外会社の従業員であつた被告川端多美子の住所と同じである。

(3) 購入者が支払うべき分割金のうち、訴外会社が払込んでいたものがある。

(4) 石橋は、「ローン明細書を販売店が銀行から貰つて帰つたかどうかは。」との質問に対し、これを否定することなく、単に「分りません。」と供述しているだけである。

(5) 福銀ローン明細書は、別紙販売一覧表の保証人とされている各被告には送付されていない。

(6) 購入者とされている各被告は、いずれも福銀ローン明細書の送付を受けたことを否定している。

(三)  以上認定の各事実に前示一記載の各事実をも総合して判断するならば、前掲証人山下及び同石橋の各供述並びに調査嘱託回答書により、福銀ローン明細書の一般的な送付手続を証明することはできても、更に進んで前記各福銀ローン明細書が購入者とされている各被告に現実に送付されたことまでは立証できたとはいえず、むしろ、右福銀ローン明細書は、訴外会社の従業員又は訴外クレジット会社社員の石橋が訴外銀行から直接若しくは郵送により受取つていたのではないかとの疑いを払拭することができない。

そしていずれにしても、前記被告らと訴外東との身分関係、前掲証人山下及び同石橋の各供述並びに調査嘱託回答書、前記各福銀ローン明細書の存在をもつて、架空契約に対する被告らの承諾の事実を証することができたとは到底いえない。

他に、前記主張を認めるに足りる証拠はない。(なお原告は、訴外丹安男が「訴外東から依頼されて架空契約の当事者になることを承諾した」旨答弁していることをとらえ、訴外東が右丹安男に対してのみ名義借用の許諾を求めるはずはないと主張しているが、右丹安男に関する契約は販売年月日が昭和五二年一二月一三日とされているところ、本件各被告に関する契約の販売年月日は昭和五三年二月から翌五四年八月にかけてであり、前示したとおり、次第に資金繰りに窮してきた訴外東が、当初は名義借用の許諾を得ていたものの、ついには無断で架空契約を締結していたことも十分考えられるのであるから、前記事実によつても原告の架空契約承諾の主張を認めることはできない)。

三請求原因8記載の主張につき、本件全証拠によるも、ボタン電話器七台を購入することが日常家事債務に該当するものと認めることはできない。ましてや、前掲証拠によれば、訴外東は、勝手に被告川端八千代を本件クレジット契約の当事老にして、右ボタン電話器を購入する契約を締結したものと認められるから、これによつて発生した訴外クレジット会社に対する債務が日常家事債務であるとする右主張は採用できない。

四そうすると、その余の点につき判断するまでもなく、別紙販売一覧表の購入者欄記載の各被告に対する請求は、いずれも理由がなく、また、右被告らに対する請求が認められない以上、右一覧表の保証人欄記載の各被告に対する請求もまた理由がない。

第二被告園田益子、同渡辺弘人及び同川端多美子に対する請求について

一被告園田益子関係

1 請求原因1ないし6及び10の事実は、当事者間に争いがない。

2(一) <証拠>によれば、被告園田は、別紙販売一覧表番号5記載の販売物件に対する代金を全額訴外会社に支払つていることが認められ、右認定に反する証拠はない。

(二) ところで、本件クレジヅト契約において、販売店である訴外会社は契約の当事者になつていないとはいえ、商品購入者としては、契約締結手続の一切を訴外会社と行ない、同社から商品の引渡しを受けるのであつて、契約上の当事者(売主)である訴外クレジット会社及び融資を行なつた訴外銀行とは何ら接触を持たない(訴外クレジット会社の確認業務が十分でないことは、前示第一の一のとおり)のである。また、分割金の弁済についても、訴外会社がこれを受領する方法で行なつており、前示のとおり、石橋もこのことを承知し、更に自ら訴外銀行に対する支払手続の代行までしていたものである。したがつて、こうした事情からすれば、購入者としては、分割金を訴外会社に支払うことによつて弁済がなされたものと理解するのは当然のことであつて、この支払をもつて債権の準占有者に対する弁済として購入者を保護するのが相当である。

(三) なお原告は、前記ナショナル(銀行)ローン購入契約書の記載などを根拠として、被告園田が訴外会社を債権の準占有者と誤信したことは重過失によるものであると主張しているが、同被告が右契約書(甲第二六号証の二)の「ご購入者欄」の住所、氏名の記載及び名下の押印をしたこと及び右契約書が同被告に交付されたことを認めるべき証拠はない(前示第一の一1と同様、訴外会社の従業員が作成したものと推認される)のであるから、右契約書の記載を前提とする原告の前記主張は理由がないし、他にこの主張を認めるべき証拠はない。

3 そうすると、被告園田に関する抗弁は理由があるから、原告の同被告に対する請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がない。

(久保眞人)

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